からだのしくみ② ~五臓六腑

 

第6回は、「五臓六腑」についてです。

五臓六腑と聞くと、「五臓六腑にしみわたる~!」なんて言葉がありますが、ビールが美味しくなる季節ももうすぐですね🍻
 
ところで皆さん、この「五臓六腑」って何のことだかわかりますか?
ただの”ことわざ”だと思っていたりしませんか?

実は中医学で出てくる言葉なんです。

中医学では、人体の内臓器官を「五臓六腑」で表現します。

まず、五臓は、心・肺・脾・肝・腎。

単なる物質としての臓器ではなく、人間の心身全体の生理機能を分類したものになります。

西洋医学の臓器の名前と似ていて紛らわしいのですが、これは、江戸時代に杉田玄白らがオランダの解剖書を翻訳する際に伝統医学の概念を無理やり当てはめてしまったからのようです。
 
心=心臓、肺、脾=脾臓、肝=肝臓腎=腎臓というように、ズバリを指しているわけではなく、臓器の働きによって生じる、さまざまな現象も含んだもっと広い意味で使われています。

それぞれざっくり言うと、こんな感じでしょうか?

●五臓

*心:五臓六腑を統括するところ。

*脾:食べ物からの生命エネルギーを取り込むところ。

*肺:呼吸によって自然界のエネルギーを取り込むところ。

*腎:生命エネルギーを貯蔵して元気をもたらすところ。

*肝:全身の気や血の流れを調節するところ。

上の「五臓」が、気血を形成して、精気を貯蔵する"実質器官”であるのに対して、
「六腑」は、飲食物を受け入れ、消化して次の器官に送ったり、水分の吸収・配布・排泄したりする”中空器官”のことを指します。

●六腑

*胆 :肝の精気(胆汁)を貯蔵して、飲食物の消化を助けるところ。

*胃 :飲食物をはじめに受け入れるところで、食物を消化するところ。

*小腸:胃が大まかに消化した飲食物を受け、さらに消化をすすめ、清濁を分別するところ。

*大腸:小腸が清濁を分けた後の食物のカスを受け、さらに水分を吸収し、排泄するところ。

*膀胱:尿を貯めて排泄するところ。

 ここまでは、普通にイメージできると思います。

六腑なので、最後に1つ。西洋医学では該当するものがなく、中医学特有なものですが大事な概念になります。

*三焦:上焦、中焦、下焦の総称。そのすべてを包み通じ合わせる腑であり、気や水液がめぐる通り道。
   
・上焦:横隔膜から上部
  (心・肺を含む)
・中焦:横隔膜からお臍まで
  (脾・胃を含む)
・下焦:お臍から下部
  (肝・腎・大腸・小腸・膀胱を含む)

この三焦は、名前があっても形はないなどと言われるくらいですので、だいたいのイメージでとらえていただければと思います。
 

 

ところで、この図に見覚えないでしょうか?

上で説明した臓腑間には表裏関係があり、五臓と五腑(六腑から三焦を除く)は一対となってそれぞれ五行に属しています。

五行については、以前の記事を見ていただければと思いますが、、


ちなみに、臓が裏、腑が表になります。
あれっ、臓が表じゃないの??と思ったかもしれませんが、臓の方が体内の奥にあるため、病にかかると重い。なので、裏なんだそうです。

 

 

以上が「五臓六腑」になりますが、ご参考までに、他にもこんなのもあります。

●奇恒の腑
脳、髄、骨、脈、胆、女子胞(子宮)
それぞれ言葉の通りですね。

中空性の器官が多く、形は上の「腑」似ているけど、飲食物を消化したり排泄したりする管ではない。

しかも、いずれも精微物質を貯蔵するので、機能は「臓」に似ているけど、表裏の関係がない。

つまり、「臓に似て臓にあらず、腑に似て腑にあらず」。。

なので、奇恒(きこう)の腑と呼ばれているようです。

  いろいろ出てきて難しそうな感じがしますが、何が言いたいかというと、健康というのは、それぞれの臓腑の絶妙なバランスの上に成り立っているということ。
 
一つの臓腑が病気になれば、他の臓腑にも必ず影響がでてきます。

つまり、治療する場合は、特定の臓器だけ治療するのではなく、関連する他の臓器も加えて治療するというのが中医学の基本的な考え方になります。

次回は、「経絡」についてです。